港南台に、全国的に見ても数少ない形成外科単科のクリニックとして開院し、10年以上が経ちましたが、未だに形成外科のことがよく知られていません。
これから毎月一回連載するコラムを読んで、形成外科を理解して頂くきっかけになればと思っています。またこれに関連して「医療は患者が主人公です。したがって、患者がより良い医療を選ぶ時代」ということを認識されるような情報も発信していきます。
傷の正しい治し方 傷あとについて 形成外科の守備範囲 外見上のハンディと美容 透析用内シャント 医療現場の格差 医療費の無駄
| 形成外科とは? |
形成外科とは?
一言で言えば傷の専門家です。
形成外科のキーワードは「傷の専門」です。擦り傷やかすり傷、交通外傷、熱傷、手術創など全ての傷を扱い、それらを「専門的によく治す」という科が形成外科です。よく治す結果、傷跡が目立たなくなります。
美容外科と誤解されることがありますが、美容は「現状の外観を変える」のに対して「ガンなどの手術やケガで失った外観を元に戻す」という点で違います。「病気として傷を扱う、全て保険診療の科」と言えば分かりやすいでしょうか。
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| 形成外科と傷の治療 |
形成外科と傷の治療
昔から医療の原点は治療にありますが、その後、機能面(リハビリ)や、精神面(心療内科)、さらに最近では外形面(形成外科)も考慮されるようになりました。形成外科は「命をよりよく生かすために外形を大切にする医療」と、理解してください。その意味で前回、形成外科は「傷の専門科」です、とお話しました。では具体的にどのように傷を扱うのでしょうか。
傷の縫い方
細い糸と針で、細かくていねいに縫います。傷の深さに応じて層を合わせ、表面の皮膚にズレや段差を作らないように、いわばジグソーパズルを組合せるように縫います。こうすることで、傷はよく治り、術後の傷痕も目立ちません。
「何針縫った」は意味がない?
よく傷を「何針縫った」と表現します。
これは「1cmに1針」というイメージから来ている様ですが、1cmの傷でも細かく縫う形成外科医からすると、これは意味のないことで、傷の長さが問題なのです。
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| 傷の正しい治し方 |
傷の正しい治し方
まだ消毒していませんか?
「傷には消毒」。実はこれ、100年前の古い常識。世界的にはもう30年以上も前から、「消毒しない方がよい」ということが分かっています。最近では、日本でも人気マンガ本などで子どもたちにも紹介されています。医療界も一般の人も、この既成概念となっている昔の常識から脱して、消毒はやめましょう。
傷治療の三原則
①消毒しないで洗浄する
②湿潤させる(乾燥させない)
③ガーゼをあてないこと。
具体的には、まず水道水で洗い、泥や汚れ、細菌を洗い流します。消毒は正常な細胞を殺してしまうので、害あって益なしです。次に、軟膏を塗るか、ラップで覆うか、市販の『キズパワーパッド』などの絆創膏を貼って乾燥を防ぐことです。
ガーゼは傷を乾かし、剥がすときに傷を傷めるのでやめましょう。この三原則は、傷が早くよく治るための環境作りにあるのです。このことが理解されれば、お風呂で傷も洗えますし、急いで病院へ行く必要もありません。
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| 傷あとについて |
傷あとについて
どんな小さな傷でも傷あとは必ず残り、一度できた傷あとは、今の医学では無くせません。しかし、傷を目立たなく縫うこと、また出来た傷あとを目立たなくすることは出来ます。
目立つ傷あととは
①幅が広い②凹凸がある③引きつれがある④ケロイド状に赤く盛り上がる⑤傷を横切るムカデ状の傷あと、などです。
目立たない傷あとにするには(深い傷の場合)
①皮膚、真皮、皮下組織の3層をピッタリ合わせ
②細い糸や針を使って、細かく丁寧に縫う、
これが最大のポイントです。「ムカデ状の傷あと」は、太い針と太い糸で縫われたために出来たものです。また、簡単に傷を閉じるためにホチキスや太い針で一層だけ縫うことがありますが、傷あとが目立ち好ましくありません。
初めの縫い方がその後を左右するので、傷をよく治し、傷あとを目立たなくする縫い方(外科の基礎)は傷を扱う他の科にも通じることです。尚、普通は目立つ傷あとの修正は保険適応外です。
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| 形成外科の守備範囲 |
形成外科の守備範囲
これまで、形成外科は「傷の専門科として」傷について触れてきましたが、今回は具体的な診療の守備範囲についてお話します。
形成外科は色々な科にまたがる?
一般的に、皮膚の病気は皮膚科、目の病気は眼科、骨折は整形外科へかかるというのが普通ですが、治療内容が「体表面の問題で手術による治療が必要」な病状には、形成外科でも扱います。
例えば、皮膚に出来た腫瘍を手術で切除する場合(皮膚科関係の形成)や、眼科でまぶたの手術をする場合(眼科関係の形成)、骨折でも鼻を骨折した場合(整形外科関係の形成)、その他、頭や顔の傷あとから足の爪の問題まで、体表面の切ったり縫ったりする手術は、傷を良く治す「傷の専門科」である形成外科の守備範囲に入ります。
この様に、形成外科は広く色々な科にまたがっているので、分かりにくかったり、混乱する方もいると思いますが、どの科で手術するかは、傷の治り方や術後の傷あとのことなどを踏まえ、患者自身で、選択してください。
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| 外見上のハンディと美容 |
外見上のハンディと美容
今回は、当シリーズの担当者が、先生とのお話を通して形成外科について初めて知ったこと、そして改めて考えたこと、とりわけ美容外科とは違うことをお話します。
悩むことの大切さ
「形成外科が美容外科と違うのは、手術の適用です。例えばホクロ一つでも(病気で心配な場合は別)、外見上イヤだというだけでは適用になりません。
10歳の子どもまでホクロの手術を希望してくることがありますが、外見上のハンディも何か大切な意味があると考えて安易に手術せず、悩むことで人の気持ちが分かる優しい心になれるかもしれない、というプラスの意味も考えてください」。
先生は命を救う外科医から「救われた命をよりよく活かす」という意味で形成外科医になられたそうです。これまで、やけどや生まれつき耳がない人など、ひどいハンディを背負った人達と接し、悩みながらもそれらを受け入れる姿を見て、励まされてきたのでしょう。私は「人生に無駄なものは何もない」ということを教えられました。
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| 透析用内シャント |
透析用内シャント
傷を治す専門としての形成外科の仕事は全身に及びます。単に外傷や手術後の傷だけでなく、切れた神経や血管を繋いで、切断した指を再生させることもできます。
その応用として「透析用内シャント」があります。シャントとは動脈と静脈を繋いで静脈への血流を多くし、透析の際に静脈からの採血を採りやすくするために、一般に前腕に作るものです。現在、血管外科や泌尿器科など、病院で作られています。
しかしシャントは一生使うもので、透析患者にとっては命綱ですので、トラブルの少ない、長持ちするシャントが望まれます。それには初めに作られるシャントが肝心です。
形成外科では、0.5ミリの細い血管も日常的に繋いでいますので、それよりも太い腕の血管を繋ぐことは容易で、トラブルも少なく日帰りで作れます。シャント手術で形成外科を思い浮かべる患者やドクターは少ないと思いますが、医療における専門性をよく知ることによって、現在最高水準の医療が受けられることを願っています。
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| 医療現場の格差 |
医療現場の格差
これまで、外傷の治療や手術後の傷のケアの新しい原則について話してきました。こうした進歩によって、術後の傷あとがキレイに治るだけでなく、なによりも傷の痛みが少ないこと、また通院もせず快適に過ごせるようになりました。しかし現状は、病院や医師によって治療法が異なり、結果も違います。
例えば、傷をホチキスで留める・太い針で大きく縫う・細い針で細かく縫うという順で傷あとに違いが出ます。
最先端の医学が進む一方、こうしたもっとも身近な医療の現状に差があるのは、「医療現場の格差」と言えませんか?
医療は本来患者のものです
この格差の中で実際に患者が受診する際、どの病院や医師を選べば良いか迷いませんか?
何を選択基準にしたら良いか迷わないためには、患者が主役という意識を持って、最新の医療情報の収集に努めてください。いつでもどこでも同じ最良の結果が得られる、格差のない医療を望みたいものです。
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| 医療費の無駄「仕分け」 |
医療費の無駄「仕分け」
来年度予算要求の無駄を洗い出す「事業仕分け」が注目されています。しかし医療費の分野は聖域となっているようです。前回お話しした医療現場の格差と併せて、医療費の無駄の検証はもっとも身近な問題のはずです。
傷の治療の無駄
傷は洗うこと乾かさないことが一番の治療法です。
100年前からの常識(消毒・ガーゼ)が変わらないと、傷の治り方だけでなく、多くの無駄が出ます。
①消毒液の無駄②ガーゼの無駄③消毒しガーゼを当てる労力の無駄④これらの処置ために通院する患者さんの時間の無駄⑤入浴の制限の無駄、などです。
当院では消毒もせず、ガーゼも当てず、当日より入浴もでき、通院は一週後の抜糸一回だけとし、無駄を省き患者さんに時間的・経済的負担をかけないで済むようにしています。
このように傷ひとつにしても、治療の無駄をなくすことで医療費は大きく縮減できるはずです。こうしてみると、形成外科は既に医療費の無駄「仕分け」を行っていると言えます。
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